スー・チー政権が独裁とか言ってる無知はちょっとこい [無断転載禁止]©2ch.net [698442892]

http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2016_0406.html

長年、軍の影響力の強い政権が続いてきたミャンマーで、先週、民主化運動の指導者、アウン・サン・スー・チー氏が事実上主導する新政権が発足しました。
実に５４年ぶりに軍の出身ではない大統領が就任しましたが、祝賀行事は控えられ、淡々とした新政権の船出となりました。
事実上の“スー・チー政権”発足の背景とスー・チー氏の思惑について、ミャンマー取材を担当するアジア総局の飯島大輔記者が解説します。

議場に向かうスー・チー氏が記者団の前を通り過ぎる僅か３０秒。カメラ片手に毎日のように声をかける国内外の記者団の呼びかけに、この１か月余り、
スー・チー氏が応えることはありませんでした。
去年１１月の総選挙で「変化」を訴えて国民を熱狂させたスー・チー氏の雄弁さは影を潜め、あえて沈黙を守っているようです。

背景にあるのは軍への警戒感です。
総選挙後、集会での演説などを控えているほか、新政権発足の夜に行われた晩さん会のテレビ中継もスー・チー氏の指示で途中で打ち切られました。
国民が歓喜に沸く機会をあえて作らないことで、軍を刺激しないように配慮しているのです。

敗者への気遣いや国民和解を演出するための対応とみられていますが、根底にあるのは軍への「恐怖心」です。
なぜなら、スー・チー氏率いるＮＬＤ＝国民民主連盟は、総選挙で大勝したものの、警察や軍を動かす「権力」は国軍司令官に握られたままだからです。
長年、自宅に軟禁されてきたスー・チー氏は、その恐ろしさを誰よりも痛感しています。

軍事政権時代に作られた憲法という大きな壁も、スー・チー氏に立ちはだかります。
憲法の規定によって、スー・チー氏は、外国籍の息子がいることを理由に大統領になれないだけでなく、軍にはあらかじめ議席の４分の１が割り当てられています。
このため、ＮＬＤは、議会の過半数を占めているものの、憲法改正に必要な４分の３を超える賛成を得るのは事実上不可能なのです。
http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/still/0406_04_gikaiandgraph.jpg

さらに、国の最高意思決定機関とされる「国防治安評議会」の実権も軍に握られたままです。
ＮＬＤ側は、外相も兼務するスー・チー氏、大統領と副大統領、それに上下両院の議長の合わせて５名がメンバーですが、軍側は、軍が選んだもう１人の
副大統領に加えて、国軍司令官と副司令官、それに軍司令官が指名した国防相、内務相、国境相と合わせて６人で過半数を握ります。
http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/still/0406_03_gikai.jpg

総選挙で改選議席の８割をおさえたはずのＮＬＤが、「国防治安評議会」では少数派に転じてしまう“からくり”があります。

憲法に手足を縛られたスー・チー氏ですが、逆に憲法をうまく利用する作戦に出ました。「国家顧問」という新ポストを設ける特別法案の提出です。
憲法の２１７条に「議会が権威ある者に職務や権限を与えることを妨げてはならない」と規定されています。
スー・チー氏を「権威ある者」と位置づけ、「国家顧問」としたのです。
この条項は、もともと、軍事政権のトップが、民政に移管したあとも合法的に権力の座に返り咲く余地を残すために設けられたと言われています。
これまで誰も注目していなかった、憲法のいわば「隠し扉」を使って、大統領になれなかったスー・チー氏を「大統領以上の存在」にしようというのです。
「国家顧問」は議会と行政府の双方に「助言する」のが役割ですが、スー・チー氏の発言を単なるアドバイスと受け止めるＮＬＤの議員や閣僚はまずいません。

軍とのせめぎ合いのほか、スー・チー氏が向き合う課題は、高すぎる国民の期待にどう応えるかです。
期待度が低かった軍出身のテイン・セイン前大統領が、経済開放で国を一変させた直後だけに、それを上回る成果を挙げるのは容易ではありません。

格差の拡大も深刻です。
ミャンマーの国民の多くは農村部に暮らし、電力が行き渡っている世帯は、まだ３割から４割にすぎません。そこに「変化」をもたらすことができるかが課題です。

(つづく)